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2004/冬 読売新聞

「父は空 母は大地―インディアンからの手紙」
―寮美千子編・訳(パロル舎刊)
NPO「環音」代表 広田 奈津子さん(24) (名古屋市守山区)


本当の豊かさ 教えられる

 この絵本は、アメリカ大陸の先住民であるインディアンの族長の一人、シアトルが一八五五年、合衆国政府の申し出を受けて自分たちの土地を去り、保留地へ移動する時に行った演説を訳したものです。自然と共生し、自然に感謝するインディアンの気持ちが、全編に込められています。
 大学生になったばかりのころ、帰宅途中に立ち寄った絵本店で立ち読みしているうちに、涙が止まらなくなってしまいました。小さいころよく遊んだ自宅近くの森が、中学生になって都市開発で切り倒された時、とても悲しかったことを思い出したから
です。
 当時は、子供心に「どうしてこんなに悲しいんだろう」と思っていましたが、自分なりに自然を愛する心を持っていたんだと再認識しました。
 大学ではスペイン語やスペイン語圏の歴史、文化を学びましたが、この本との出合いを機に、世界各地の先住民族の文化に興味をもち、卒論の研究テーマにもしました。卒業後は、四百年以上にわたる外国支配の末、二〇〇二年五月に独立した東ティモールの復興や文化交流を支援したいと、「環音」を設立しました。
 「大地にふりかかることは/すべて/わたしたち/大地の息子と娘たちにも/ふりかかる」と、シアトル族長が終盤、開拓を断行する人々に対して発した警鐘の言葉は、百五十年たった現代社会でも、全く色あせていないと思います。本当の豊かさとは何か、読むたびに考えさせられます。


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